12/12ののらねこ       文は田島薫



孤独のバットマン

きょうも朝からいい天気で、寒い、ココア食堂にはお客は来ない。

朝、近所へ出かけて帰って来たシャンさんが、下にバットマンがうろうろして

たよ、って報告してくれたんで、あ、そー、ってすぐにドアの外へ出てみた。

そしたらシャンさんはすぐに注釈をつけた、下だから見えないよー、それに、

「記事」になるような動きはしてなかったし、って。

一応、うちの事務所の庭と呼んでいるところの、ビル住人みんなの共有スペー

スでけっこう広い(何エーカーかって?)ベランダを地上を見ながらひと回り

してみたけど、ねこっこひとり見えなかった。


先週も2階までは来てる、ってうわさ以外、うちのココア食堂の3階ではほとん

どお客さんの姿見てないんだけど、週末の夜、帰ろうと、外階段を下りたとこ

ろに、バットマンがいた。


おーバットマン、って背中をもんでやると、ニャーと言って、ゆっくり身をか

わしてから、道路を横切って行って、少し離れたところから振り向き、しばら

くこっちを見てから、また向こうへ歩いて行った。


会ったばかりの時のバットマンは、おひとよしで、無防備、他のねこ見ても、

なんだか親し気にどんどん寄って行っちゃったりしてたのが、けんか売られて

負けたり、逃げたりしてから、一念発起し、弱そうなねこを追いかけて大成功、

その後も調子乗って、茶とらを追いかけたりして、たまたま成功続きで、どん

どん追い払っちゃうもんで、友だちがいなくなっちゃたのか、このごろ後姿に、

孤独の影が、いや、かっこよく言う場合は、せなかに、の方がいいか、いや、

ねこの後姿はせなかというより、こーもん、か、じゃ、

こーもんに孤独の影が見えるようだった。(訂正しろっ…バットマン談)


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