12/19ののらねこ       文は田島薫



待ってるねこ

今朝は晴れてんだけど、閑古鳥ココア食堂わきの、たらいガ池に薄氷が張った

ぐらいの寒さ。

シャンさんによると、事務所のビルの外階段の入口でバットマンが門番をやっ

ていて、よ、にゃ〜、っとそれぞれのあいさつをかわしたそうだった。

これでおしまい、じゃ、なんなんで、このコラムのために、また近所の路地を

ひと回り取材見回りに出かけた。


道路を横切ってつーとんと同じ柄の子ねこがいつもの狭い庭に入って行って、

段ボールの上で毛づくろいし、そばのブリキ缶のふたにはカリカリフードが

残っていた。

となりの家の塀にはウス茶のねこの尻が向こう側へ飛び下りるのが見えた。

一本となりの路地の陽の当る駐車場を向こうへ歩いて行くくろとらがいた。

それぞれ自分の裁量でそれなりに用事ありそうに動いていたんだけど、ひとり、

「待ってるねこ」がいた。


待ってるねこは昼の営業の終わった配達の弁当屋の閉まったガラス戸の前に

茶の毛の長いのが、何か期待しながら、行儀よく座っている。

配達から帰って来たバイク青年が、ちら、っと彼に目をやってからガラス戸を

開けて中に入り、ガラス戸をまた閉めた。


待ってるねこは前にも何度か見た。

バットマンはガラス戸に向かって、開けてくれ〜、って言って入って行くタイ

プなんで、ほっといていいんだけど。


黙って待ってるねこには人生の諦観(?)のようなものを感じる。

居酒屋の格子の入口に向かって座って待ってるねこも見たことがある。


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