●新連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回はSFホラーか、ってお話。
不思議な国のワタシ
凍てつく夜、慢性的運動不足解消泥縄的発想のもとにウォーキングに出かけた。いつもと反対の方向、つまり駅から遠のいていく奥の地域に足を運んだ。
驚いた。我が町内に大変なことが起っているではないか。
オシャレな新築家屋がいつのまにか建ち並び、この時期のせいなのかアチラの庭、コチ
ラのベランダにクリスマスイルミネーションが競い合っているのだ。赤、青、黄などの
まばゆいばかりの光のスノウマンやサンタクロース。はたまた点滅する豆電球を庭木に
巻きつけたさらなるデコレーションもあれば、軒先を派手に豆電球で縁取った家まであ
る。
エッ、ココハドコ?ラスベガス?
一瞬、足が止まった。
数年前までは我が町内はまだ畑があったり、空き地があったり、樹齢百年を越すような
大木もそこかしこにあった。さらにその奥にはこんもりとした森をもつ八幡神社が土地
の氏神様として君臨している。したがって老人の多い地味な町だった。それがいつのま
にかクリスマス通りに変わっているのだ。
思うに、ここ数年で土地持ちの老人がバタバタ死んで相続税が払えない子供たちが土地
を売り、買った不動産屋が切り売りしたり、いくつも建売住宅を作ったのだろう。
住む人が変われば町も変わる。時代が変われば好みも変わる。
生活の基準が変わっていけば、大切なもの、美しさの基準も変わっていく。
それにしてもこんな身近な足元から変わっているなんて…うかつであった。
古いものは新しいものに駆逐され、やがてそれも新しく台頭するものに滅ぼされる。そう
思うと自分が急に年取ったようで、冬の夜の寒さがゾクリと身に沁みた。