12/5ののらねこ       文は田島薫



みんなフリーズしてる

朝からけっこういい天気なんだけど寒い、各地から初雪の報告もあった。

ココア食堂は、皿にエサ入れて、いくら待っててもお客は来ない。

さっき、となりの建物の物置きの屋根にきたなくろがいたので、おーい、エサ

食べにおいで、って声かけたんだけど、じっと背をまるめて座っていて、こっ

ちをクールな目で見つめるだけで、ビクとも動こうとしない。


これだとコラムが書けないので、またご近所の路地を見回りに行った。

つーとん親子が寝てる路地の家の小さい庭には発泡スチロールの箱の上で親子

が寝てたんだけど、親の方がつーとんじゃなかったから、おかーちゃんの方か

も知れない、まてよ、前に寝てるの見たのはもともとつーとんじゃなかったの

かな、今度は顔をこっち向けてたんだけど、ふたりともぐっすり寝てるだけで、

何も芸はしなかったので次へ行った。


ひと回りして別筋の路地へ行ったら、ちょっとしゃれた(?)ビルの入口の植

え込み花壇の縁に植木の葉を風よけにしてグレーのねこが背を丸くして座って

たので、お、って少し近寄って観察したんだけど、彼もじっとしたまま目だけ

怪訝そうにこっちに向けていた。

しばらく見つめ合ってたんだけど、おたがいに新しい感情が芽生えるようなこ

ともなかったんで、その場を離れたら、すぐとなりの弁当屋のわきにうす茶と

グレーの上品な色のねこが背をまるくして座っていて、じっと動かないで、目

だけこっちと合った。

やっぱり、温かい季節なら、寝転がったり、笑ったりしてるとこなんだろうけ

ども、こんな日にコンクリの上で寝転がっても快適じゃないんだろう。


発泡スチロールベッドのつーとんカイロねこ親子以外のねこさんたちは、みん

な堅い表情で、これからのもっと厳しい日々のことを思っていたんだろう。


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