今週の雑感(昔のもありの)              文はさぬがゆたか


ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だよりです。
しばらく感動ものじゃなくて雑感記に変えたいとのことです。



ちょっと遅れた恐縮話しで申し訳ない。

3年前の暑い夏が過ぎさろうかという日の夜、僕らはテレビに釘ずけになった。

ニューヨークの摩天楼が崩れ落ちる姿を映し出していた。それは出来すぎたCGでも

なく確かな現実の映像としてすごくゆっくりに見え、悲惨さよりも現実との距離感を

確かめるので精一杯だった。

9月11日。理由はともかく、逃げ場の失ったネズミは噛み付くしかない。

きっとアメリカは、僕らの知らないところで大きな取り引きに失敗したに違いないと思った。

それより10数年前の湾岸戦争時。まだ日本がバブルで空元気だった頃に僕はアメリカに

行った。やはりテロを警戒してか機内はガラガラで、皮肉にもエコノミーの席一杯に

脚を伸ばして寝られる快適さだった。

目的はLAからドメスティックでソルトレイクに乗り継ぎ、そこからワイオミング州の

ジャクソンホールまでスキーに行くこと。何もこんな時期にと思ったけれど、仕事の

都合もあり決行した次第だった。

戦時中のため、黄色い大きなリボンが空港ビルにデコレーションされていたロス空港に

くらべれば、田舎の空港は質素で何ごともないようなのどかな雰囲気に見えた。

雪原のどまん中にポツンとある平屋根の空港から、ものの10分も走るとエルクの群れに

出会う。それも半端な数ではない群れ。ここアメリカでもワイオミング州は環境にうるさい

ので特に有名らしい。そんな群れを横目に予約しておいたコンドミニアムに到着し、

さっそくマーケットに買い出しに出かける。長居するには自炊が鉄則!ってわけ。
 

さてさて今回の話しは観光話じゃなくて、そんな小さな田舎町のとあるレストラン&バー

でのこと。僕らは仕事とはいえ楽しみのスキーで来てることもあって、にぎやかな顔を

しながら店内に入った。カウンターの端から座ったはいいが、どうやら店のボスが不機嫌な

顔で何かを言うじゃないか。

「その席はボブの席だ。テーブルに移ってくれ!それから、その隣もジェドの席だからな!」

※(ちなみに名前はもう確かじゃないけれど)

理由が分からないまま、テーブルに移動すると、そこから見えたのはカウンター席の頭上には

名前が書かれた黄色いリボン群が並んでいた。この町から湾岸に兵士として出向いた店の常連

達の席だったのだ。

はっきりと聞きとれないボスの話しは「ジャパンはお金だけを出して兵隊を出さない弱め!」

的内容に受け止めつつ、頭の中では映画「ディアハンター」を思い浮かべていた。

日本からアメリカも遠いけれど、同じアメリカでも中央国家と地方との距離もやはりかなりあ

るんじゃなかろうか。小さな名誉と笛号令で動くのはやはり地方の青年であり、動かしやすい

んだろうか?どんな戦争もお互いいい青年ばかりが最前線で闘わなくちゃならない。そんな

仕組みが腹ただしい。
 

「僕は米国への観光スキーヤーを増やし貢献するために、この地に取材をしに来たわけで

ノンキな平和ボケした者じゃないんよ!」と力説したはずだったが

「こんな場末な田舎のスキー場にはアメリカ人だって来やしないぜ!まったく!」って

顔をしていた。ちなみにこのジャクソン・ホールスキー場は米国内でも難易度ランキング

ではいつも上位に位置するクレージーなマウンテン。標高も富士山八号目あたりから滑り

出す息苦しさで有名なんだって。んとね、それからこの町ね映画「シェーン・カムバック!」

の舞台にもなった町。







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