今週の雑感(昔のもありの) 文はさぬがゆたか
ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だよりです。
しばらく感動ものじゃなくて雑感記に変えたいとのことです。
「家出した犬」
一緒に住むようになってはや半年の我が犬君が、一昨日から帰ってこない。
正確にはいつもの運動公園に散歩がてらジョギングに行った時にいい気になって綱を放したのが原因で、彼はすっかり舞い上がってしまった
のである。
いろんな犬君達とジャレまくり、そりゃ楽しそうでボール片手に呼びまくる主人の声なんかが聞こえるわけがない。綱を外してあげるのは今までにも
何回もあったわけで、そのうち戻ってくるはずとたかをくくっていたが今回は違った。
自由の快感を知ってしまった彼は近くまでは寄るものの走り去る。そのうち陽は傾き閉園の時間になってしまう。ぼかあ頭にきてしまうのである。
ジョギングで汗ばんだシャツは冷えだし、喉は枯れるは仕事はまだ終わっていないってのに、無邪気なバカ犬に振り廻されている。公園から家まで
数キロだ!彼が賢い犬君なら帰ってくるはず。って思いながら車に乗り込んだ。
案の定、車を追って彼は走りだしてくるじゃないか。
「ふむふむ、頼もしいやつだなやっぱり」って思っていたのもつかのま、ミラーから彼は消えた。
その晩はいつもより御馳走を皿に盛って彼を待ったが一向に帰ってこない。暗闇に目を凝らしてもいつもの長い尻尾が見えない。同じ道順を何度も探した
ものの見つからない。
いい気になって飼ったものの、庭の草木は噛みつぶしいろんな工具を持ち去り随分と悩ましてくれる。繋いだ廻りはまるで地雷原の跡のように掘りまくる。
芝生はめちゃくちゃである。
このまんま彼がいなくなってくれたらどれだけ楽だろうか。
そんなささやきが聞こえる。
だいたいまだ買ったばかりの餌が山ほどあるし、予防接種に出費したばかりじゃないか!
結局深夜にまた探しに走り朝方また走った。ひと眠りしたものの仕事が手に付かない。ひどいもんである。
あくる日の昼どきに公園に出向いた。大きな駐車場際を歩いていると、公園の造園業の人達の弁当にまとわりつく彼の姿を見つけた。「モグ〜ッ!」って
声かけると片足をひきずりながら一気に走ってくるじゃないか。
車の後ろ席に彼をぶち込み、お互い疲れきった表情で戻った。その後彼はいつもの小屋でごくごくと水を飲み鎖を抱え寝てしまった。彼の初めての家出は失敗
だったとは思えない日になった。