今週の感動(昔のもありの) 文はさぬがゆたか
ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だよりです。
今週は先々週来たばかり、ほとんど今の「今週の感動」。
我が栃木の工房から車で10分ちょっと走ると渡良瀬遊水池という
広大な湿地帯のすみっこにたどり着く。
作業でちょっと息詰まったり、何かで切ない気持ちになったり
するとさっさと出向いてしまう。関東平野のどまん中になんとまあ
大きな原野があることに初めての人は驚くに違いない。
かつて明治時代に日本初の公害訴訟で有名になった「足尾銅山鉱毒流失
事件」が発端。利根川と渡良瀬川、思川に挟まれた地域を公害と水害から
守るという前提で出来上がった湿地帯である。詳しくは述べないにしても
国と企業の野望から無視されたかっこうで、その地域にあった豊穣な谷中という
村が地図の上から抹消されたのも事実だ。今現在でも 随所にその村の記念碑や
屋敷の跡を見ることが出来る(ちょっと同ココ通の久保さんコラムみたいかな?)
さてさて話しは違って、そんなおかげで広大な湿地帯が残されるようになった今
まるで北海道のような風景になっている。地平線のかなたに日光連山、秩父連峰
都内をまたいで丹沢越しに富士山。阿武隈からくっきりと筑波山まで首をぐるぐる
しなくちゃならない。
こんな厳冬期にゃ誰もいないはずとたかをくくって来た自分が見たものは、渡り鳥の
生態を撮るカメラマンの数々。バードウォッチングを楽しむ人々、釣りを楽しむ人。
都内から来たという油絵教室の婦人団体。懐かしい油絵の具の香りこそ漂うものの
誰もが音ひとつたてないで、冬の葦原を楽しんでいる。
何ひとつ持たないで来た僕は、無造作に河原沿いに育った木々から淡く入りこむ冬
の日射しに気ずくだけだった。
ごく普通に絵が描きたくなることに感謝のひとときでもあった。
一番眺めのいい広場には自動販売機もないし土産屋もない。マップ案内版だけの
不親切さが本当は大切なことなんだとも思ったのであります。
しかし赤城からの上州おろし風って寒いんだよなあ。