今週の雑感(昔のもありの)              文はさぬがゆたか


ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だよりです。
しばらく感動ものじゃなくて雑感記に変えたいとのことです。



 『蕎麦屋の娘の話し』

ボクは一年を通して蕎麦が好き。

「そば」じゃなくて「蕎麦」っていう感じで。

その方が若干ハイソなおっちゃんに見えるんじゃないかって。

ま、そんな事はどうでもいいわけで蕎麦の為ならえんやこらどこにでも。

親しい友達が本格十割蕎麦屋をやっているせいもあって、いろんな名人店にも

誘ってくれる。小腹にちょっと治まるくらいの分量で2000円近くも払わなくちゃ

いけない店もあったけど、もう行かない。

今日の話しはそんなんじゃなくてごく近所の蕎麦屋。そば粉はきちんとしてる

んだけど切り方が大雑把な蕎麦屋で、思わず「ほほ〜んっ」と言いたくなるくらい。

でもねえ、かき揚げが旨いんだわ。さっさと夕方には閉めてしまうくらいの繁盛振り

は地元でも噂のひとつなんだ。

閉店まぎわにぽつんと一人で入った今日も、奥の調理場で彼女は働いていた。

せっせせっせとネギを切っていて、たぶん20才前くらいの今どきの娘さんなんだ。

従業員6〜7人の中で一番若いからたぶん下っ端扱いらしく、いつもトントン切ったり

洗いものばっかり。

ボクは暇なのでいつも横目でその姿を見ている。スケベな気持ちじゃなく見ている。

ちょっとふっくらしたホッペが薄赤くて、髪は頭巾できっちりしちゃっているから、

髪形をどうのこうのする余裕もないに違いない。ペッタンコなシューズは洗う暇も

ないくらい疲れている。
 

そんなこんなしているうちに蕎麦とかき揚げを食べ、蕎麦湯を頼んだらいつもなら

渋いおばちゃんが運んできちゃうのに、今日はその彼女じゃないか。

「気が付かなくてすいませんでした」って言うじゃない。

その差し出した手をつい見たら、爪は短く肌がギザギザに荒れてんの。

可哀想と思うのと働く手に感動しちゃったわけで、蕎麦湯を覗きこむ

ように飲んだ。

考えれば当たりまえの姿に感動しちゃうなんて、一体どんな時代?

あっさり感動しちゃう自分も考えてみれば簡単な涙腺おっちゃんかい!




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