連載●文はクボユーシロー

小旅行日記23


(西麻布その2)

急坂を下り切ると『外苑西通り』に出た。ここから『日赤』裏の道に行くのに、

ストレートな道が無い事は記憶に残っていた。昔、『日赤』裏の友人宅からみょう

に曲がりくねった道を歩いて有栖川公園まで皆でぞろぞろと行ったのである。

地図で見た通りに西麻布の方に上がって行ったが見事に迷った。いかにも高級そう

なマンションだらけの場所に入り込んでしまった。夫婦だろうか、中年の日本人

女性と禿げた白人のジョギングとすれ違った。二人のトレーナーの背中が汗で

上半分だけ濡れていた。

高級マンション街をようやく抜けると、今度は高級住宅密集地帯(高級なのに密集は

ちょっと変かな)に入った。どこも高い塀と背の高い植木で囲まれ、コンクリート

2階又は3階建ての邸宅は白く塗られ南側のベランダの窓が前面ガラスだったりする。

こんな高級住宅を見ながらふと思い出した話、それは学生時代の『日赤』裏の友人

(彼の家は普通の家だった)の話である。当時、彼の家の近くに西武鉄道創業者の

『おめかけさん』の屋敷があった。そして、後の西武デパート社長になった人がそこ

の屋敷の息子(あの堤さん)なんだと。そんなことを考えながら折りたたみ自転車を

転がしていると、なんとなく昔来た事のある場所に出た。『日赤』裏の道である。

『日赤』は巨大な建物に変貌していた。『日赤』裏の友人の家もすぐに見つかった。

家は当時より大きくなっていて、表札には彼の兄さんの名前があった。 おわり


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