10/20ののらねこ       文は田島薫



遅番で出勤すると、ドア前の皿は汚れて空のままだった。

出足の悪かったお客さんとタイミングが合わなくて、シャンさんもクボセンセーも

エサを出さなかったようだ。

いつもなら少し開けておくドアや窓も寒がりのシャンさんがぴったりと閉じている

もんだから、後からお客さんが来ても、お客さん自身声かけなけりゃ、気がつかれ

ないことになる。

お客さんだって曜日の感覚はそんなにはっきりしてるかわかんないので、あ、また

きょうも休みなのか、と言って、腹ぺこのまま帰っちゃったかも知れない。


エサを出して少し待っていると、ブラウンが顔を出した、がみんなで外に出てたので、

さすがに慣れたといっても気後れしたのか、そばまでは来ずにじっとこっちを

うかがっているだけだった。

ちょっとたって見てみるとエサは減っていなかった。

ま、それほど腹減っているわけでもないし、さっき来て、なんだきょうも休日か

と言って、明日また来よう、って思ったわけでもないようだ。


しばらくすると、ずーっと以前に来ていた若くろとらが階段を上がって来てから、

こっちを見てまた引き返して行った。

ベランダのすみまで行って、下を見ると、若くろとらはこっちを振り返ったので、

戻って来いよ、と声をかけたが、道を向こうへ渡って行ってしまった。


となりの建物のいつもブラウンが寝ている場所で、別の若くろとらが寝ていた。

どうやら、ふたりとも以前来てたくろとらじゃないようだ。

双児の兄弟が厳しい流浪の旅の果てに、ここのねこ街にたどり着いたのかも知れない。

(そんな話あまり聞いたことはないけど)


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