連載●文はクボユーシロー

小旅行日記20


(庄和町1)

『庄和町役場前広場でフリーマーケット』という記事が、何気なく見ていた朝の

新聞の片隅にでていた。フリーマーケットにはあまり興味はなかったが、

『庄和町』という未知の町に引かれた。その日は天気も良かったので、のこのこと

出かけることにした。庄和町は西側を春日部市、東側は江戸川を挟んで千葉県野田市

と接する埼玉県最東部の町である。

JR大宮駅から東武線大宮駅に乗り換え、東武野田線を柏方向に向かった。沿線は

住宅開発がかなり進んではいるが、まだいたる所に美しい武蔵野が残っていた。特に

線路の北側に、かつて農民が肥料の枯葉を取るために作った雑木林がまだ美しく

連なっていた。春日部駅周辺はもう都会となっていたが、その2つ隣の『南桜井駅』

周辺は新興住宅に蝕まれ始めた『武蔵野』というところか。

庄和町内にある唯一の鉄道駅である南桜井駅で東武電車を降りた。ホームをまたぐ

駅舎はまだ新しく、エスカレーターを上ったところに改札機があるタイプである。

改札口を出ると古い駅前商店街のある南口側と、大きなスーパーが駅前に『ドカン』

とある新興地の北口側に分かれる。折りたたみ自転車をかかえた僕は役場のある北口

に降り、人通りの少ない所で自転車を組み立てた。役場のだいたいの方角は予め見た

地図で分かっていたつもりだったが、しばらく走ってから迷った事に気付いた。

つづく


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