5/12の日記 文は田島薫
25年前のボブディラン来日武道館公演に私も仲間と行ったんだけど、当時村上龍がそれについて、いろいろな文化人にインタビューしたテレビ番組が
あって、それの再放送をしていた。
当時もその番組は見ていたのだけど、若い沢田研二や泉谷しげる、その他が
次々いいかげんな話をしてたのは全然憶えてなくて、見た当時も印象的でずっと
ひっかかっていて、今度もやっぱり一番気になったのは結果的に的はずれだった
秋田明大へのインタビューだった。
日大全共闘委員長だった彼は数年後、広島だったか山口だったかの実家へ帰っていて、自動車整備工になっていた彼は、無口で元気のない疲れた感じの若者に
なっていて、闘争時のオーラはかけらもなかった。
質問にも、ほとんど答える内容を持ち合わせてないように見えたし、本当に
突然街角で専門外のことを聞かれた少年のように、困っているように見えた。
一時盛り上がった闘争も最終的には制圧される形で終わったわけだから、挫折感を引きずっていたろうし、手際よく立場を総括する気も必要も感じていなかったの
だろうとは思うけど、彼もちょっと漏らしたように、結局理性よりも一時の感情的
正義感で体を動かしてしまったといったことなのだろう。
当時見た時よりも彼の気持ちが少しわかる気もして、自分だって同じ立場だったら同じような態度になっていたかも知れないと恐れながら、やはり、行動を起こす
前後に論理的総括ができないのは無惨に見える、とあらためて感じたのだった。