5/12ののらねこ 文は田島薫
ゆっくり出勤すると、階段の下のいつもの青い車のボンネットの上につーとんとまだらの親子がふたりしてねころびながらこっちを見て、いつも遅いな、と目で
言った。
階段を上って見ると、どうしたことか週末に山盛りにしておいたエサが、ほとんど手つかずのまま残っていた。こんなことはかつてなかった。
クボセンセイに聞くとどうも、流れ者のエサやりレディの他に1階の事務所の新入
女性社員がエサをやってるらしく、このあいだはふたりして入口に尻だけ見せて
何か食べてたそうだ。
しかし、うちのエサを食べなくても遊びには来る。今朝もドアを開けたままにしてたら、いつのまにかつーとんが事務所の中に入って来てたそうだ。
先週はドアのすき間からまだらがこっちをずっと見てるので、クボセンセイ作の
ねこじゃらしをやってみたら、大盛り上がり大笑い、でもすぐ終わりにして
なに気なく窓から見ると、向こうで寝てたはずの親のつーとんがドアのそばにぴったり
来てて、すき間の方の何かを目で探していた。
どーも、大人のつーとんもあそびたいらしい、連休の時もねこじゃらしであそんでもらえれば満足だったのかも知れない。
しかし、ねこじゃらしでじゃらされる親子ってのはおかしくて少しふびんだ。