1/6ののらねこ 文は田島薫
新年「正式の」出勤すると、くろとらが階段を下りて来て物置き屋根伝いに向こうへ行くとこだった。びっこは直っていた。
事務所ドア前のエサ皿に行って、やっぱりきょうも空だ、とあきらめて帰るとこなのだろう。
ちょっちょっと呼ぶと、ブロック塀の上の向こうの方で立ち止まって
こっちを見ている。
上へ上がって、皿に入れたエサをかざして見せて手招きする。
しばらくして行ってみると、皿のエサは減っていた。
見回してみると、隣の物置きの屋根につーとんがまるくなっている。屋根には陽があたっている部分もあるのに、わざわざ日陰の部分にいる。
さむそうにしているので、おい、どーして日なた行かないんだ?と
声をかけた。よぼよぼこっちを見ると、少し顔を輝かしてそそくさと、
屋根から下りて、こっちへ上って来る。
にゃーと新年のあいさつをした。あたまをちょっとなでてやる。すぐにエサに行かないでこっちとエサの中間で少し迷ったふうにこっちを
見ているのでひっこむと、すぐエサに行った。
またしばらくしてクボセンセイが出勤して来て、つーとんが階段の下の影でさむそーにしていたので呼んだら階段をいっしょに上がって来た、と言った。
彼はどーも、きょうは同情をさそう作戦をやってみたよーだった。