2/10ののらねこ
      文は田島薫



遅番で出勤すると、ドア前にはエサが出されていた。

クボセンセイもちゃんとやってるようだ、と思ったら水の容器がカラ

なのに気がついた。


きょうは朝からだれもお客さんは来なかったそうだ。

昼ごろ、切れた卵を買いに徒歩1分のスーパーへ行って来たら、階段の下に

つーとんがいて、こっちをなんとなく見ていた。おおつーとんと言いながら、

そばを通りぬけたら、さっと、そばの車の下にかくれた。

ねこって、たいていいつもと違う場所で会うと知人だということに気が

つかないようなのだ。

車の下を覗き込んで、エサを食いにおいでと言ったけど、知らんぷりだった。


しばらくたってドア外へ行ってみるとエサは減っていたので、話は通って

いたようだ。あれ、あれはいつもの人だったかなと考えたのだろう。


共用スペースのベランダの上から下を見ると、斜前の家の前できょうも

兄弟がひなたぼっこをしていて、ふたりでこっちに気づいて見上げている

ので、よお、と片手を上げてみた。


また部屋に戻ろうとベランダにある仮設住宅(大家が自宅改修の時仮住まい

にしていた)を回って来たら、反対側へ、ととと、と逃げるくろとらの後姿

が見えた。


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