連載●文はクボユーシロー

小旅行日記13


(流山その1)

千葉県流山市。この粋な名前の町に住民票を写したことはない。しかし、流山市を

囲むように松戸市、柏市、三郷市とそれぞれ3,4年ぐらいづつ住んだのだが。

この町には武蔵野線『南流山駅』ができるまでJRの駅は無かったが、流山鉄道と言う

単線の小さな私鉄が昔から走っている。常磐線馬橋駅で接続している流山鉄道は10キロ

に満たない距離で、昔は流山特産の『みりん』を運ぶための鉄道だったらしい。

終点の流山駅までの間に4つの小さな駅がある。その一つに『小金城址駅』があり、

かつて僕はこの近くに住んだことがある。そこは松戸市と流山市の境界が入り組んだ

所だったが、住所は松戸市であった。その『小金城』は戦国時代の城で今は一部石垣

が残っているのみで、城跡には寺と幼稚園が建っている。

流山はかつて江戸川の海運が盛んな頃、物資の中継やみりんの生産でこの地域一番の

栄えた町であったが、常磐線が建設された時その頃の住民達が駅の設置に反対したため

駅は柏に行ってしまった。かつて小さな宿場町だった柏は今日大繁栄しているが、駅に

反対した流山はすっかり寂れてしまった。かつての船着場のあった辺りに昔ながらの

呉服屋など古い商家が少し残っている。 つづく



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