新連載●文はクボユーシロー
貞熊人生研究所 1
(O氏の旅立ち)
最近、二人の知人が相次ぎあの世に旅立った。そのひとりO氏について
書く。彼とは約30年前に知り合った。その後、今日まで年賀状のやり取
り程度のお付き合いであった。知り合った当時のO氏は日中友好協会の
千葉県の理事長であり、内科の医師であった。彼は病院勤務の医師であ
ると共にその病院労組の活動家であったため、解雇され裁判で撤回闘争
をしていた。それ以上の詳しい内容は知らない。裁判が終わった後彼は
医療現場に戻らず、鳥取の大学で細菌関係の研究生活をしていた。
昨年の春、彼から突然『千葉に戻ることになった。』と知らせがあり20
数年ぶりに一緒に食事をした。その時の彼はとても元気でアメリカの学
会機関誌に発表した研究レポートを皆に見せ『私のライフワークなん
だ』とニコニコしながら言っていた。英文のそれは僕には分からなかっ
たが。
今年の8月12日の朝、彼は日課である犬の散歩に行こうと自宅の玄関を
出た時だった。そばにいた奥さんに『ちょっとめまいがする。』と言っ
て、奥さんにもたれかかった。それがO氏の最後の瞬間であった。奥さ
んも医師であり普段は忙しく、その日はたまたま休日のため玄関まで見
送ったのだという。
奥さんの腕に抱かれて突然旅立ってしまったO氏、享年77歳。先生のご
冥福を祈ります。 つづく