11/18ののらねこ
      文は田島薫



きょうの朝の一番のりのお客はめずらしく若白だった。

階段を上がって来て踊り場でおすわりして、こっちを見ている。

皿にはエサを入れてあるので、ほらエサ食べたら、とすすめるんだけど、

エサの方へは目もくれないでこっちを見続けている。


ちょっと前から若白は元気がなく、ま、前よりはよくなったようだが、

すこし体の具合がわるいように見えるので、食欲がないのだろう。

目がこっちに、ぼくの気持ちを読み取ってくれないのかなーと

言っているので、考えてみて、すぐに気がついた。

(私はけっこう気がつく時は気がつく人間なのだ)


で、ねこの万能薬またたびを小皿に水で溶いて出してやった。

よぼよぼと、でも一滴残らず嘗めた後、その場でくつろいだ。


ちょっとたって、見に行ってみると、もういない。

そのへんにいるのかなと、ドアから出て、見回してみると、

階段下の物置きのプラスチック屋根の上で、陽をいっぱいに浴びながら

幸せそうな顔でまるくなって寝ていた。


やっぱり、またたびで元気になって、物置きの屋根へ駆け上がったのだ。


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