11/11ののらねこ
      文は田島薫



きょうは事務所に着く手前で新人のねこに会った。


事務所そばの地蔵通り商店街に出る近道の路地で時々はうちの常連や、

そのへんで飼われているらしい顔なじみは見るのだけど、きょうは、

見なれないダークグレーのねこがすぐ足元の道の端におすわりしているのと、

ふいに目が合った。


思わず、おうっと挨拶したら、彼はみどりがかった、黄色のきれいな目を

向けて、なんだろなこの人はという顔をしたが、特に警戒するそぶりもなく

同じ姿勢のままこっちを見ている。

私は後ろを振り向きながらそのまま歩いて行ったが、彼もずっとこっちを

見続けている。


これで、また新しい顔見知りができた。

しかし、ねこって、エサを食べに来た時にけっこうなれてるように見えても

別の場所で会うと、ぼくはあなたのこと知りませんよと、いった顔をするのだ。

でも、それは悪気があるのではなく、記憶能力といった理由からなのだ。

どうも私にもねこのこと言えない、同じようなところがある気がする。


事務所に着くと、やっぱりツートンカラーが一番に来て、いつもと同じ

ことをやってから、帰って行った。



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