連載●文はクボユーシロー

ユーシロさんの 食い物話 4



(『三好』のラーメン)

甘味店のラーメンが好きだった。僕の育った浦和の町には甘味店が多

かった。今はどうなのか知らないが、浦和駅西口近くだけでも6,7軒あっ

たと思う。どの店でも甘い物のほかにラーメンや焼きソバを出してい

た。埼玉会館の南側は県庁通りで、西から東に上り坂となっている。埼

玉会館の南西の角、坂を上り切ったところの信号から10メートルぐらい

先の右側に『三好』と言う店があった。

『三好』のメニューは夏はかき氷やところてん、冬はお汁粉や雑煮、四

季を通してはあんみつ類とラーメン、やきそば、飲み物類という平凡な

甘味店である。


『三好』は20席ぐらいで7,8坪の広さ、60歳ぐらいの女主人と30台半ばの

娘らしい女性がふたりでやっていた店だが何時もすいていた。

僕はここのラーメンが大好きで学生時代、週に1,2回は通っていた。大

体、どこの甘味店のラーメンもシンプルで好きなのだが、特に『三好』

のやつは透き通ったしょうゆ味でさっぱりした昔ながらの東京ラーメン

であった。具はこれも定番のシナチク、焼豚、ナルト、ほうれん草、の

りである。最近のギタギタして、変な匂いのするやつはラーメンと認め

ることはとてもできない。

『三好』はもう無い。浦和にたくさんあったラーメンを出す甘味店もど

こかに消えてしまった。かろうじて『かめ福』がある、いろいろなガイ

ドブックに紹介されて有名だが、ここはあんみつもやっているラーメン

屋である。



戻る