5/13ののらねこ
      文は田島薫



朝来ると、事務所のアパート前で、ゴミ出し日でないのに誰かが

出した生ゴミに、営業努力家のクロトラが何か選別作業をしていた。


が、私を見るとさっとそばに止めてあった車のかげに逃げた。

跡を見ると、破いたポリ袋から、なにかの汁を拭き取ったティッシュ

のだんごが何個か転がっていた。貧しいメニューだ。


3階の事務所のベランダにエサを入れて、上から呼んでみたが、

昼過ぎになっても食べに来ない。


ゴミ作業中の彼を見た時、おなじみさんの、のらねこらしい行動に、

小さな新鮮なおどろきと、敬意さえ感じたのだが、


ひょっとして当人は見られちゃいけないとこ知人に見られたと

思って、ヘコンでいるのかも知れない。

大丈夫、君はのらねこの鏡だ!


(…何?…うれしくないって?)





戻る