新連載●文はクボユーシロー

ユーシロさんの埼玉を歩く4


(小川町)

『トトロ』の世界が車窓を走る。雑木林や森が連なり、東武東上線も

『森林公園駅』辺りから緑が濃くなる。武蔵野を壊されてしまった県南

部から来た人間には心がとても安らぐ。40年以上前の浦和にだってこの

くらいの森はたくさんあった。(ここで威張ってもしょうがないが)

周囲を木々に囲まれるようにこの町はあった。昔から『和紙の町・小

川』と言われているらしいが、別に紙に興味があったわけでない。たま

たま、ここの小川高校グランドでサッカーの試合があったので、のこの

ことそれを見に来ただけだった。

サッカーのあと少し町を歩いてみた。40年ぐらい前の日本にタイムス

リップした様なこの町の夏の午後、人通りはなかった。かつては栄えた

のであろう小川町は大きな料亭や蔵や町医者の西洋館が所々にある田舎

町だ。駅から西側に10分ぐらい続く密集した古い町並みが突然大きな川

で遮断されている。浅く流れの速い川でじっと白鷺が魚を狙っていた。

向こう岸は黒々と『トトロの森』が広がっていた。 つづく



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