7/8ののらねこ
      文は田島薫



皿に入れたエサはだれもなかなか食べに来ない。

きょうは朝から、かーっと暑いから毛皮のお客さんたちはちょっと

タイミングをはかっているのだろうと思っていたら、やっぱり、

午後、日が陰った夕方近いころ、だれか来て食べて行った。


先週末は人なれしたバットマンがまたひょうひょうとやって来た。

ドアの前まで来ると、他のお客さんの場合はたいていまっすぐ

エサのほうへ行って、食べるとすぐ帰っちゃうのだが、

彼はエサはいらないようで、その場にごろんと横になった。

(こっちが見てるとエサに行かず、こっちが引っ込むと行くと

いうパターンもあるんだけど彼は飼い猫だからずっと行かない)


そばへ行ってあごをなでてやると、ほんの数秒だけおとなしく

なでられた後、急に立ち上がりベランダの奥へ移動してそこで、

横になりなおした。

こっちを見なくて、こっちになんの気も使っていないようだ。

なんだなんだ、あごなでられるのが嫌いなのか、それとも、

こっちの場所でなでてもらおう、というつもりなのか、

判断に迷ったが、こっちを見ていないので、どちらでもない

ようだった。


気まぐれバットマンは、また急に立ち上がると、階段のほうを

向いて目標をさだめてから帰って行った。

うちはたぶん散歩コースのおわりなのだろう。



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