連載

ユーシロさんのちょっと知人の話 2


(塩崎さん)

猫は太ったけど塩崎さんはとってもスマートになっていた。

塩崎さんは以前ココアのお隣でスタッフの修子さんとデザイン事務所を

やっていた。主には食品関係のパッケージと聞いた。

当時の塩崎さんは笑顔の素敵なふくよかな人で、恰幅のよい凄腕の

女流デザイナーというイメージだった。

塩崎さんの事務所とココアの共通点はみんながネコ好きという点だ。

塩崎さんはツナという名の子猫を飼っていて毎日事務所に連れてきた。

ココアでは時たまツナを借りてみんなでかまっていた。

特にワコさん(今は写真の仕事で多忙、ネコの雑誌に連載している)は

しつこかった。しばらくして塩崎さんの事務所は引っ越した。

塩崎さんとスタッフの修子さん(彼女もネコ大好きでネコの版画の個展を

定期的に開催)が目白台で仕事をしている事とアンティークショップも

開いている事を後で聞いた。

ココアでは田島が描いた猫絵のポストカードをインターネット

http://www.cocoa-s.com/で売っている。

絵は好評だが売上が今ひとつ、そこでポストカードを塩崎さんの

アンティークショップに置いてもらおうと私が交渉に出かけた。

目白台の椿山荘から歩道を北に向かって50メートルぐらいに一階が

喫茶店のビルがある。そのビルの2階にあるアンティークショップは

広くないが店主がデザイナーだけにセンスの良い店である。

店の中では修子さんがパソコンに向かい、歩道側の窓際のいすには

ネコが寝ていた。修子さんに用件を言うとしばらくして奥から塩崎さん

が出てきた。私はびっくりした。彼女の笑顔はそのままだったが、

あの体型がストーンとスマートになっていたのである。

何故、いったい何があったのか(大きなお世話か)わけを聞く事は

やめた。「ツナは」と聞くと彼女は窓際を指差し、

私は再度びっくりした。よーく見るとあのツナが、お椀型にした

左右の手にホワッと乗っていたツナが、今では頭だけでも手から

はみ出る大ネコになっていた。

ポストカードの件を快諾してもらい私は塩崎さんの

アンティークショップを後にした。

ちなみにショップの名前はツナ。 



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