12/16ののらねこ
      文は田島薫



きょうの一番客はやっぱり、つーとんだった。

彼はお客さんの中で一番親し気で、にゃーとこっちを見てあいさつもする。

エサを食べ終わったころのぞいてみると、もういないので、

ベランダから下を見ると、1階の物置きの屋根にいた。


おーいくったかいと、話しかけるとこっちを見て、またかまってもらおう

と思ったらしく、上がって来ようとした。その時、うちの事務所のとなりの

人がドアから出て来て、階段を下りて行った。つーとんは大慌てで階段の

すき間に逃げた。間もなくすぐ、その人は忘れものしたらしく、戻って来た。


やりすごしたのを見計らったつもりのつーとんはゆっくり出て来て、階段を

上って来ようとした。とその時、また同じ人がドアから出て来て、階段を

下りて行った。つーとんはまた大慌てで階段のすき間に逃げた。

しばらくするとこりずに、またつーとんは上がって来ていた。


近所へ買い物に行って、戻って来ると、人嫌いのくろとらが階段を上る途中で

こっちを見て、物置きの屋根伝いに逃げて行った。びっこをひている。

おーいちょっちょっと呼び止めると、はるか向こうで立ち止まってこっちを

見ている。エサ食べに来な、と言いながら3階まで上がって下を見ても、

彼はずっと同じ姿勢でこっちを見ている。エサの袋を見せて、手招きした。


しばらくして窓から見ると、エサを食べたくろとらがびっこをひきながら、

階段を下りて帰って行くところだった。


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