連載●文はクボユーシロー

貞熊犯罪研究所 5



(松戸放火殺人事件その後)

8月26日現在、この松戸市モーター会社社長宅放火殺人事件は解決して

いない。8月5日の事件の次の日にマブチモーター社は記者会見し、「当

社はリストラもしていないし、他にトラブルも無く怨恨による犯罪とは

思えない」と言っている。しかし後日の週刊誌報道によると『最近、群

馬にある最後の国内工場を閉鎖した』『香港で特許の裁判がこじれてい

る』『数年前、中国の工場で大きな争議があった』等が載っていた。公

になってる要因だけでも 『報復説』は否定できない。また元役員による

と「会社がここまでなるにはいろいろあった…」とも言っている。1954

年に創業し、一部上場を果たし年商1000億円近く売上げるまでになった

会社が何も無かったとは思えないし、かと言って記者会見の席で『怨

恨』の思い当たるフシはこれとこれなどとも言えなかったのだろう。

前回、当研究所は『怨恨・報復説』を捨て、『金目当て説』を採った。

しかし状況は若干違ってきた。前回も疑問に思っていてはっきりしな

かった殺人後の放火の件である。犯人はすべての証拠を完全に消すため

に放火したのだろうか。いや犯人は放火する時に使った油の缶を残して

いった。つまり彼は物的証拠を残す事にあまり関心は無かったのであ

る。証拠隠滅を目的として遺体のある現場に火を放った訳ではないので

ある。

社長は亡くなった妻と娘の葬儀で言っている。「現場を見た時、この世

に神はいないのかと思った…」と。

現場は建て込んだ住宅街、夏の午後4時は人通りもあり火の手が上がれ

ば誰かが電話し、すぐに消防車は来る。犯人は現場を全焼させないこと

を狙ったと推理できる。犯人の目的は二つある。一つは卑劣にもその現

場を社長に見せる事…。 つづく


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